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経営理念が浸透しない会社の施策4例と浸透させる方法2選

2023年11月02日


  • 「経営理念が浸透せず、事業がうまくいかない」
  • 「理念を浸透させるために、色々と施策を行ってきたが、効果がない」
  • 「従業員から理解を得ることができない」

こんな風に感じたことはありませんか?

本質的な意味で経営理念が浸透すれば、従業員はタスクベースではなく、掲げる経営理念のために、使命感を持っていきいきと仕事をします。そしてそれは、顧客を創造します。経営理念は、会社の成長、存続にはなくてはならないものなのです。

経営理念は、従業員がその大切さに気付きはじめるのに1年、企業の風土として当たり前になるのに3年、さらに熟成して、経営者自身だけでなく、従業員がみんな新しい従業員にも自然に伝播させることのできる状態になるのに5年ほどかかると感じています。

長い年月がかかることではありますが、絶対に無駄にはなりません。
今回の記事では、このように長期戦ではありますが確実に経営理念を浸透させるべく、浸透していない原因を具体的な施策を用いて明らかにし、浸透させるための方法をお伝えしていきます!

*少し自己紹介

弊社SS総合会計は静岡県浜松市にある会計事務所です。代表である私は、税理士として500社以上の経営者を見てきています。また、毎年「理念策定塾」というセミナーを開催しています。ここでは、経営者と経営理念を一緒に策定し、浸透までフォローしています。今まで何十人の経営者が実際に経営理念を浸透させることで会社の危機的な状況から、創業以来最高益を出したり、会社が良い方向に転換したケースを見てきました。
今回は、そのノウハウを生かして経営理念を浸透させる方法をお伝えします。ぜひお役立ていただければと思います。

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1.経営理念の現在の風潮

理念浸透の方法について

最近、中小企業向けにいろいろなセミナー講師をやっていると、経営理念が非常に重要視されているなと実感することがあります。近時の新型コロナウイルス感染拡大、2030年までのSDG‘Sの実現や2050年の脱炭素社会及びに向けた様々取り組みや議論が活発になる中、中小企業の今後のあり方が問われているような気がします。具体的な仕事の上では、営業手法も対面からオンラインに変わっている企業が多く、いろいろな企業からZOOM等のウェブ会議システムを使ってサービス内容を伺う機会が増えてきました。その中で気づいたのは、プレゼンテーション資料の中に、必ずといっていいほど「ミッション」「ビジョン」「バリュー(行動指針)」がしっかりと盛り込まれているということです。単純に凄いな~!しっかりした企業だな~と思うと同時に、何か非常に無機質に感じてしまうこともあります。ミッション・ビジョン・バリューが流行りになってやしないか?とにかく経営理念を伝えておきさえすれば単純にいい企業に見えるとか、採用に使えるとか、怪しい企業に見えないとかそういう邪な感情が見え隠れするのですよね。なぜ邪に見えるのでしょうか?なぜ無機質に見えるのでしょうか?それはプレゼンをしているその社員の方から想いが伝わってこないからです。ただ読んでいるだけ、いや読まされているだけにしか見えないからです。この会社は理念が浸透していないのだろうなとすぐに予測できてしまいます。理念はあれど、しっかりと社員まで浸透していない、そんな会社は世の中に数多くあるのではないでしょうか。

2.経営理念の重要性‐ピーター・ドラッカーの名言から-

ピータードラッカーに学ぶ理念浸透の方法

その前になぜそもそも経営理念が必要なのでしょうか?今から経営理念の重要性について、経営の神様・ピーター・ドラッカーの名言をもとにお話します。これからの時代はいい企業にならなければならず、そうでなければ人口減少の中、採用ができない、またこれからはCSR(企業の社会的責任)を重視した経営をしなければ、誰からも選ばれることがなくなるかもしれない、だからこそその軸となる経営理念がなければお話にならない!これも一理ありますよね!列記とした経営理念を立てる理由だと思います。しかし、経営理念を本気で考えるとき、もっと本質的なことを考えていかなければなりません。それでないと社員まで浸透していかないからです。

2-1.事業の目的は【顧客の創造】である

経営の神様ピーター・ドラッカーは言いました。事業の目的は「顧客の創造」と。事業の目的は、利益を生み出すことや、キャッシュを残すこと投資をすること、従業員を満足させること、社会貢献することと様々なことがありそうですが、ドラッカーははっきりとその第一義的な目的を「顧客の創造」であると示しています。「顧客の創造」とはどういうことか。いわゆる営業でいう新規開拓のことでしょうか?言葉だけを捉えると一見とても難しそうに見えるのですが、答えはとてもシンプルです。それは「お客様に感動して頂き喜んで頂き、どんどんその数を増やしていくこと」なのです。それ以上でもそれ以下でもないのです。一方で顧客の創造という言葉は、とても厳しい現実を教えてくれています。例えば病院は患者さんが一人もいなくなれば存在できません。学校は生徒がいなくなったら廃校になってしまいます。同じように、企業もお客様がいなくなったら生きていけません。企業と呼ばれるすべての組織は、実はお客様に生かされているのです。したがって、お客様に喜んでもらえるものを考え、お客様に喜んでもらえる商品やサービスを提供し、お客様に喜んでもらえる仕事をしよう、ということは、きれいごとではなく、ごく当たり前のことなのです。では、その目的を果たすためにどのように顧客を増やしていけばいいでしょうか?社長1人で増やすことができるのでしょうか?どんなに優れた社長であっても、一人でできることはおのずと限界があります。協力者がいるからこそ、事業を事業として進めていくことができ、事業は喜んでもらえる人を増やしていくことができるのです。仮に、社員さんが事業の目的に共感もせず、仕事に価値を感じていなければ、事業は価値あるものになりません。そこに社員さんの共感がない限り、自発性も創意工夫も生まれず、優れた仕事にはなりません。そうなんです!事業の唯一の目的である「顧客を創造」するためには、あらゆるステークホルダー(従業員やその家族や地域の人たち)を巻き込んでいなければ、企業は成長することはできない仕組みになっているのです。

2-2.ステークホルダーを巻き込むには?

では何を軸に、あらゆるステークホルダーを巻き込んでいけばいいでしょうか?それはまさしく「経営理念」なのです。その答えについてもドラッカーの5つの質問からそのヒントを見ることができます。ドラッカー5つの質問とは、喜んで頂く顧客を増やすために必要なことが質問形式でまとめられているもので、ドラッカーはこう言っています。「これら5つの質問は、正面から答えていくならば、必ずや、各位のスキルと能力とコミットを深化させ、あるいは向上させていくはずである。ビジョンを高め、自らの手で未来を築いていくことを可能にするはずである」と。その代表的な質問が第一の問いである「われわれの使命は何か」ということです。そうなんです。まさに顧客の創造を実現するために、社員メンバーを含むステークホルダーを巻き込むための軸=経営理念を一番初めの問いに持ってきているのですね。「あなた方の経営理念は何ですか?」これが最初の質問になっているのです。経営理念を掲げる本質的な意義は、CSR(社会的責任)を果たすためでもなく、若者を採用するためでもありません。大切なお客様に質の高い商品サービスを提供し喜んでもらい、その感動の輪が広がって次のお客様を生み出していくために必要なのです。顧客の創造のために社員の心に灯をともし、社員のみならず、地域の人たちにもその心の炎が伝波していくその源泉こそが経営理念であり、企業の存在意義そのものなのです。これが経営理念の意義であり本質的な重要性なのです。

3.経営理念が浸透しない施策4例

理念が浸透しなかった例

それを踏まえて、よく聞かれるのは、「どうやったら理念が浸透するのでしょうか?」ということです。では、まずは浸透のための施策の失敗例を見てみましょう。

3-1.「理念を毎朝唱和する」

理念浸透のためによくあるのが毎朝の「理念唱和」です。まさに昭和なやり方ですよね(ダジャレではありません)。中小企業の社長はみんな思うのです。とにかく理念を覚えていないなど言語道断だから、まずは社員に暗記させなければならない。だからこそ、できれば毎朝、大きな声で理念を唱和することによって、みんなの心に理念が浸透するはずだと考えるのです。これは大きな勘違いです。理念を唱和することそのものには意味がありません。これは理念暗記には役に立つかもしれませんが、社員の心に浸透していくかといえば、そうでもないのです。むしろ逆効果の場合もありますよね。毎朝大きな声で唱和すればするほど社員の心が離れ、みんなが冷めていくなんてことはよくある話です。つまり理念唱和が本質ではないということです。

3-2.「クレドを作成する」

「理念を唱和するなんて古いよね!今の時代は、「クレド」を作成するのが大事なんだよ!そんな理念を唱和するなんてダサいこと言っていないで、クレドを作ってみんなに渡すのが今風でイケてるやり方なんだよ!」こんなセリフを今の若手経営者や後継者から聞こえてきそうですよね。クレド(Credo)とは「信条」「志」「約束」を意味するラテン語で、企業活動の拠り所となる価値観や行動規範を簡潔に表現した文言、あるいはそれを記したツールを指します。よくあるのがオシャレなクレドカードを作って全社員に持たせていつでも見ることができるようにするというパターンです。これ自体を否定はしませんが、これだけでは理念は絶対に浸透しません。見せかけのクレドカードを作成しただけで理念が浸透すればこんなに楽なことはないですよね。最近はクレド作成が流行りにもなっていますので、結構作成する企業は多いですよね。でもしっかりと浸透しているところはあまり見たことがありません。理念浸透の本質を欠いたクレドカードの配布は、実際のところは理念唱和とあまり変わらないかもしれません。

3ー3.「人事評価に理念共感項目を盛り込む」

人事評価に理念評価を盛り込むということは、最近の経営者が人事評価制度導入のときの項目として欠かせないものとなっております。SS総合会計でも10件以上の人事評価に関わらせていただいておりますが、必ずと言っていいほど理念共感の項目を付けてほしいという依頼があります。理念に共感できたら評価が上がり、共感できていない場合には評価が下がる。非常にシンプルで分かりやすいものなので、強制的に社員もやらざるを得ない環境になるため浸透しそうな気もするのですが、これも本質ではありません。人事評価はおよそ半年に1度くらい社長もしくは上司と部下と面談して評価項目について確認するのが一般的だと思います。しかし、半年に1回確認したところで何かが実際に変わるのでしょうか?理念が伝わるのでしょうか?例えば月次でPDCAを回すところもありますが、サイクルが早くなる分効果は上がりますが、本質的ではないのです。どんなに理念共感の項目に点数配分を高くしても浸透させるのは難しいです。人事評価は理念浸透の補完的役割は果たすことはできるかもしれませんがど真ん中ではないのです。これは実証済みです。

3-4.「理念浸透のためのクラウドツールを使う」

最近理念浸透のためのクラウドツールというものが出ております。理念浸透にいよいよDXがからんでくるのかと驚愕してしまいます。そのツールによくあるのが、社員の精神状態を見えるかするために気分を点数化しており、さらに何か不安や不満があったら社長に匿名で意見を述べられるようになっているというシステムです。「精神状態を見える化する」一見とても耳障りがいいように聞こえますが、非常に危険性をはらんでいます。ある企業の経営者でこのようなツールを入れて、実際に動かしてみたそうなのですが、あらぬ方向にいってしまったというのです。それはまさに匿名での意見を通じて起きたのです。その意見が会社のためになっていればいいのですが、まったくそうではなく、社長への誹謗中傷がほとんどであり、あまりのひどい内容に社長の精神状態がおかしくなってしまったのです。社員の精神状態をよくするために導入したツールによって社長の精神が破壊される。なんだか本末転倒の事態ですよね。これが機能しないことなど常識的に考えれば分かりそうなものです。匿名での意見は、簡単に言えばSNSにおける匿名での誹謗中傷となんら変わらないのはないでしょうか。もう理念浸透どころの騒ぎではないですよね。このようなツールが流行り、アプリ開発した企業が上場しているとなれば、本当に何が本質かわからなくなりますよね。

4.経営理念を浸透させる方法2選

理念が浸透した2つの例

さあ、ここから本題です。では理念を浸透させるためには、どのようにしたらよいのでしょうか?私は理念浸透に大切な要素として2つのことを挙げています。

4-1.経営者が経営理念に対し、本当に情熱を持てるものにする

まずは、【経営者自身が理念そのものに対して本当に情熱を持てるものとする】です。こんなこと当たり前のことと思うかもしれませんが、実際は本気で理念経営をしている中小企業の社長は非常に少ないと思います。では、理念が腑に落ちているかどうかの基準は何か?それは、経営理念にまつわるストーリーを語れるかどうかです。経営理念とは、簡単に言えば経営者の価値観であり大切にしたい想いです。強い想いがあるということは、その想いに至った背景があるはずなのです。これがストーリーです。その想いに至るまでのストーリーを情熱的に話せるかどうかが一つの基準になると思います。つまり、経営理念のヒントは過去にあるのです。では具体的にどのように100%腑に落ちる経営理念を策定したらよいのでしょうか?こちらにつきましては、過去の経営コラムの「経営理念の策定手順について」で詳しく書いておりますのでそちらを参照してみてください。

4-2.社員の仕事と経営理念が結びついているという実感を持たせる

二つ目は、【社員の今現在の仕事と経営理念が結びついていると実感を持たせる】です。実はここが理念浸透の一番の肝といっても過言ではありません。しかしながら、ほとんどの企業がこれをやっていないのが現状です。理念浸透の本質はクレドを読むことでも、理念の唱和をすることでもないのです。今この瞬間にやっている仕事が社長がいつも熱く語っている理念と結びついたときに初めて社員は仕事に深く感動し、胸が熱くなるのです。そのためにはどうすればいいのか?まずは、上司が社員のやっている仕事に対して常にフィードバックをしてほしいのです。もしその上司が未熟であれば、社長自身が社員一人一人に今の仕事についての意味と目的を語ってほしいのです!つまり仕事の意義付けです!何のためにこの仕事をするのか。もしある社員が自分が提供したサービスを通じてお客様が感動したという体験をしたのであれば、社長自身がその社員に「今○○君、素晴らしいよ!今、まさにお客様に提供したサービスが自分がいつも語っていた理念そのものなんだ!やりがいがあるでしょ!○○君が頑張って成長してここまでサービスできたからお客様が感動したんだよ!よかったね!」と感動体験を社員と共に味わうようにしてほしいのです。やがて感動したその社員が別の社員が同じような体験をしたときに同じようなフィードバックをします。つまり感動の連鎖が始まるのです。このようにして理念が流れるように浸透していくのです!

5.60名に理念浸透させている経営者の私が、日々行っていること

私はSS総合会計グループの代表であり60名を超える社員と共に仕事をしておりますが、いつでも経営理念を語るようにしています。経営方針発表会のような大きなイベント、毎週の朝礼、そして共に仕事をして感動したとき、仕事の大小に関わらず常にフィードバックをするようにしています。例えば、総務経理のような直接お客様にサービス提供しない間接部門ってありますよね。このような部門にはどうするのか?私は、総務経理が一生懸命本社の仕事を行うことで、それが連鎖して営業担当に伝わり感動価値を提供しているのだと真剣に伝えます。また、弊社ではお客様が来社したときに総務が一番最初に応対するのですが、そこでも「コンサルティングは何もコンサルタントだけが行うわけではないんだ。お客様が弊社のドアを開けた瞬間から始まっているんだよ。もし総務が笑顔で素晴らしい挨拶をしてくれたら、それでお客様の気分が上がり、もしかしたら経営会議ですごいアイデアが浮かぶかもしれないよね。コンサルティングは総務が起点になっているんだよ!」と真剣に伝えます。そうすると、みんな使命感が出てくるのです。だから、弊社の総務は本気で挨拶をして最高のおもてなしをしようと常に努力しています。なぜか?それは使命感があるからです。タスクベースで仕事をしていないからです。何のために仕事をやるのか。それはすべて顧客様に感動してもらうためであり、掲げる経営理念のために行っているのです。会社で働くメンバーはみんな何となく仕事をしたいわけではないのです。社員もパートスタッフもアルバイトのみんなも限られた命を使って会社にいるのですから。どうせなら使命感に燃えて仕事をしたいと思うのが人間なのです。その使命感は、どんなに福利厚生を厚くしても、どんなに給与待遇を良くしても絶対に出てこないのです。それは仕事を通じてでしか感じることができないのです。だからこそ、その仕事に意味があり理念とつながっており、お客様に役に立っていると実感できたときに、本当のやりがいを感じることができるのではないでしょうか。私は自分自身の実感としてそれが理念浸透の本質であると思わざるを得ません。

6.まとめ

いかがでしたでしょうか?今回は、経営理念について、浸透しない施策を用いて原因を示し、浸透させる方法についてお話しました。

【従業員がお客様の役に立っていると実感できたとき、本当のやりがいを感じることが理念浸透の本質であること】を理念浸透の本質とするならば、経営理念を浸透させるのは簡単なことではないのかもしれません。時間がかかる作業なのかもしれません。

でも、だからこそ価値があるのではないでしょうか?
一度理念が浸透して作られた社風は、そう簡単には崩れることもありません。それは本物だからです。是非、経営者の皆様も勇気を振り絞って社員に関わり、理念を熱く語ってみてください。それが理念浸透の第一歩であると確信しております!

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この記事は私が書きました

代表税理士 鈴木 宏典

税務財務コンサルティングのみならず、コーチング手法による会社のコンセプトメイキング、ビジョンメイキングを通じたコンサルティングを得意とする。東京・大阪・名古屋・仙台等でセミナーを行い、中小企業のみならず、同業者である税理士のビジョンをもかなえるべく、事務所の仕組化を全国に広めている。