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ES(従業員満足)かCS(顧客満足)か?

2020年07月21日

1.従業員満足を第一義的に考えることがすべてなのか?

 

最近、よくESが重要かCSが重要かという議論を耳にします。ESというのは、Employee Satisfactionの略で、従業員満足のことを指します。これに対して、CSとはCustomer satisfactionの略で、顧客満足のことを指します。「ESなくしてCSなし!」最近はどちらかというと、従業員満足を重視する論調が多いような気がします。これがトレンドだといってもいいと思います。私個人的には、中小企業においてこの論調は捉え方によっては非常に危険ではないかと考えています。「従業員を大切にしなかったら、顧客を満足させることなんてできない!」「従業員の幸せこそ、理念経営だ!」「お客様第一主義の時代は終わった」ES至上主義の方からはこのような声が聞こえてきそうです。自分は、従業員なんてどうでもいいから、顧客満足を考えてこそ中小企業の経営であるなんてことを言っているのではありません。ただ、従業員満足を第一義的に考えることがすべてであるという考え方に疑問があるといっているのです。まず、ESかCSかに答えを出す前に、このES=従業員満足とは何かという定義考えないといけません。

 

2.社員は自分の掲げる理念・価値感に共感してくれる人間でないといけない

皆様、社員満足とは何ですか?社員が満足している状態とはどういう状態であると定義していますか?ほとんどの中小企業は、社員満足なんて全く定義していません。社員の満足なんて定義できるのですか?社員満足=社員の幸せなんて人それぞれじゃないですか?なんて声が聞こえてきそうです。そうなのです。人の幸せなんて人それぞれなのです。だからこそ定義をしないと、企業にいろんな人種が集まってきてしまいます。私は、大学時代にゼミの先生から「人の幸せとは極めて主観的なものである」と教わりました。そのときに非常に納得し、自分はいろんな人と接し、いろんな価値観を認められる人間になろうと決意したのを覚えています。あれから20年以上がたちました。自分が経営者になってみて思うことは、改めていろんな人間がいて、いろんな価値観の方がいて、だから世界は素晴らしい!と思うと同時に、自分と一緒に仕事をしていく社員メンバーは、自分の掲げる理念・価値感に共感してくれる人間でないといけないのだということを学びました。企業経営において、どんな人に残ってもらいたいかの基準を明確にするためには、社員がどのようなことに幸せを感じて満足してもらうかを定義づけないと価値観がバラバラになってしまうことになりかねません。

 

3.満足を定義する

人の満足を定義する上で最も参考になるのは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローです。皆さんの中にも、マズローが提唱している欲求5段階説を知っている方は多いのではないでしょうか?マズローによれば、人間の欲求は次の5つに分けられます。

生理的欲求:これは、生きていくために必要となる本能的、無意識的な欲求です。例えば食欲、性欲や睡眠欲などが含まれます。

安全の欲求:経済的な安定、健康で病気の心配がないこと、犯罪などに巻き込まれないことなどを求める欲求です。

所属と愛の欲求:家族や友人、同じ共同体の仲間などから必要とされ、孤独を感じずに暮らしたいと思う欲求です。

承認の欲求:社会的な価値ある存在だと認められたいと願う欲求です。この欲求には2つの段階があり、他者からの尊敬や注目を求めるのは低いレベル、一方、自己評価を高めることで達成感や自尊心などを満たそうとするのは高いレベルの承認欲求です。

自己実現の欲求:これが最も高いレベルの欲求です。自らの中に潜んでいる可能性の欲求、自己啓発行動、創造性の発揮などを含み、自分が秘めている可能性を開花させて「自分がなり得る者になりたい」と願う気持ちを指します。

これらの欲求はレベルの低い順番に現れ、ある程度満たされると、次の欲求が現れます。また、1~4は欠乏欲求で、5は成長欲求であるといわれています。これを私なりに解釈すれば、人の満足や幸せにはレベルがあるといえます。そして高次元な欲求で満たされているとき、すなわち自己実現欲求=成長欲求が満たされているとき、より幸せを感じやすいし、本来、人間にはそのような欲求がだれでも備わっているのです。

また、起業家支援をされているコンサルタントの福島正伸氏は以下のことを言っています。すなわち、人には安楽欲求と充実欲求と大きく分かれるのだと。そして人は無意識でいると、安きに流れ、どうしても楽な方を選びがちになる。ですから仕事に対しても「楽なほうがいい」「休みが多いほうがいい」という考え方をしがちです。しかし、楽であれば幸せで生きている実感があるかというとそうではないのです。楽なだけだとどこかつまらなく、やりがいもなく、生きがいもありません。だから、人はもう一つの「充実」を求めるのです。つまり、「充実の欲求」です。日々の充実感を「生きがい」と呼び、大きな充実感を「感動」と呼ぶ。このように述べているのです。

 

4.社員が満足している状態=成長と社会貢献の同時発揮

これら二つの見解からも、社員が本当の意味で満足するためには、日々が充実し、自分が成長し、社会に貢献しているという実感が欲しいといっているのです。SS経営コンサルティンググループでは、社員が満足している状態=成長と社会貢献の同時発揮だと定義しています。ですから、自分たちの価値観に共感してくれる人は、弊社で非常に幸せになれますが、逆にこのような価値観を持てない社員は、自然と私たちから離れていくことになるのです。そうでないとお互いに不幸ですからね。

にもかかわらず、従業員満足重視を掲げている中小企業社長は、しっかりと従業員満足を定義していないために、どんな人も受け入れ、どんな満足や欲求も受け入れようとして、社内が崩壊しているケースがほとんどです。社員の楽をしたいという欲求からでる不平不満をすべて受け入れ、一生懸命聞き、戦略や顧客に対するサービスを変容していく。このようなことが日常茶飯事になっている経営者が非常に多いです。社員のどんな意見もくまなく取り入れることが良い社風を作っていくと信じている社長があまりに多すぎることに驚きます。従業員満足がトレンドなのでこの風潮は仕方がないことですが。

 

5.顧客に対して深い満足を与える体験=従業員満足

最近、エンゲージメントを高めることが社員満足を高めるということをよく聞きます。社員エンゲージメントとはごく簡単にいうと、「自分が所属する組織と、自分の仕事に熱意を持って、自発的に貢献しようとする社員の意欲」だそうです(「エンゲージメント経営」著者コーンフェリー・柴田彰)。では、社員エンゲージメントを高めるためには、会社は何をすべきなのでしょうか?ここに、面白いデータがあります。「エンゲージメント経営」という本の中で、日本の企業において、社員エンゲージメントと相関関係の高いドライバー(要因)を調査したそうなのですが、もっとも高いドライバーは驚くべき結果となったそうなのです。「自社におけるキャリア目標達成の見込」や「一個人としての尊重」「興味がある仕事を行う機会」等の8つのドライバーのうち、最も高かったのは、なんと「顧客に提供する体験価値への自信」だったそうです。これをCustomer Experienceというそうで、簡単にいうと、「顧客に対して感動なり満足感を持ってもらえる製品やサービスを提供できている自負心の有無が、社員のエンゲージメントを大きく左右しているということになる」ということだそうです。つまり、顧客に対して深い満足を与えることができ、それを体験できることこそが従業員満足だといえるわけなのです。まさに顧客満足を第一義的に考えたことによって得た従業員満足が、エンゲージメントを最も高めた結果となったということなのです。

 

6.ES(従業員満足)とCS(顧客満足)を統合していくことが大切

経営の神様ピーター・ドラッカーは、企業の唯一の目的は「顧客の創造」だといっています。顧客を生み出し、最高の価値を提供しつづけることが、企業経営にとって最も大事なことであるというこの言葉は、まさに経営の本質をついているといえますよね。ということは、自分はES(従業員満足)は、企業においては、当然にしてCS(顧客満足)を軸に考えるべきものであるといえるのです。ここを無視した過度なESは、経営のスピードを止め、経営を窮地に追い込みます。ES重視の社長がいろんな社員の意見のみならず不平不満を聞きすぎ、社員の安楽欲求を引き出すことで、周りも引きずられ、顧客が置いてけぼりになり、会社が崩壊するなんてことはよくあることなのです。だからこそ経営者は、顧客に感動価値を与え満足してもらうことを基軸に、社員を教育し課題を与え、それを乗り越えさせ、仕事そのものをできるようになってもらうことが重要になるのです。そうすれば、社員は能力が向上し成長することでお客様から喜ばれ、その結果として自己実現欲求が満たされることで、真の幸せを得ることができるのです。ES(従業員満足)とCS(顧客満足)は両立するものであり、私たち経営者は、その2つを統合していくことが大切な仕事であり、経営そのものであるといえるのです。

 

この記事は私が書きました

代表税理士 鈴木 宏典

税務財務コンサルティングのみならず、コーチング手法による会社のコンセプトメイキング、ビジョンメイキングを通じたコンサルティングを得意とする。東京・大阪・名古屋・仙台等でセミナーを行い、中小企業のみならず、同業者である税理士のビジョンをもかなえるべく、事務所の仕組化を全国に広めている。

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